長期未相続の土地について考える

先日、以前の測量でご協力いただいた地権者様より連絡があり相談に伺いました。
この土地は道路内民地で、数代にわたり相続登記がされていない非課税の土地でした。そのうちの一部の土地は、自身の所有地に接続する土地ではなく、第三者の宅地に接続する通路として使用されています。また、該当する土地は元々ほかの地権者との共有地でしたが、もう一人の地権者の持分は、相続の際に実際に使用する地権者への持分譲渡が行われています。今回の相談土地もその際に合わせて処理を試みましたが、相続関係が複雑で断念したという経緯のある土地です。相続登記の義務化が不動産登記法第76条の2第1項に規定されたことに伴い、「相続登記を進めなければ」と思い立ち相談に至ったという経緯です。
今回のケースは、法務省のホームページにも記載のある(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html)「正当な理由」(1)の「相続登記の義務に係る相続について、相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合」に該当すると思われますが、ご自身が問題意識を強く持って、戸籍調査等を進めていただき概ねの相続人の確認まではされていました。しかし、道路内民地で非課税であることから、売却による利益も見込めず係る経費は相続人で負担することになり、ただただ出費だけがかさむ構造となります。また、相続人を特定できたとしても、30人余りにもなる相続人全員と交渉をして了解を取り付ける作業は大変な労力を必要とすることは想像に難くありません。交渉の過程で相続人のうち一人からでも協力を拒否されれば、せっかくの努力も水の泡となります。
一般論としては、時間が経過するに従い相続関係人もどんどん増加していくことから早期に解決したほうが良い、とアドバイスすることになるかと思いますが、非課税の通路という現在何ら不都合のない土地に対してこのような多額の費用と労力を費やして相続登記を進めることが良いことなのか非常に悩ましいことです。
相談主様は非常に責任感の強い方で、「本家を引き継ぐものとして何とか解決したいと頑張ってきたけど、正直なところ大勢の相続人に対して根気強く説得して協力を取り付けるよう動くことを想像すると、自身の年齢や体力を考えるとつらいんです」とこぼされた本音に、胸が苦しくなりました。
「本来相続人全員が協力して進めるべき事案なので、一人がすべて抱え込んですり減っていくくらいなら無理して進めるのはやめましょう。他に協力者が現れて、分担しながら無理なく進められるようになるか、実際の使用者からの申出などがあって費用負担が軽減されてからでも良いかも知れませんね。」ということで、その日の相談は終了となりました。
土地家屋調査士として、所有者不明土地や相続登記未了土地は関係地権者を特定する上で大きな障害となっており、円滑な業務運営のためには進めて欲しいものです。ただ、長期相続登記未了土地には相続登記をする側にも経済的・心理的に大きな負担を強いるものだと、改めて考えさせられる出来事でした。

